四十八歳の抵抗 改版 著者名:石川達三(著)
出版社:新潮社
出版年:2008.02
ISBN :9784101015149
また新潮社の復刊ものの一つ。
昭和31年という想像もできないほど遠い昔の物語。
バブルさえ実感できなかったぼくのような人間でも、
共感できるような読みやすさがあって、
現代でも60歳くらいの人が読んだら、
引き込まれてしまうのではないかと思う。
題名からも、その作品の渋さがひしひしと伝わるのであるが、
その通りで、平凡な保険会社のサラリーマンの西村が主人公。
「平凡」であるどころか、平板すぎて、会社の外での行動は、
不器用だったり、幼稚だったりで、
よくいる何もできないサラリーマン、といった感じ。
(もちろんそう言うぼく自身がそうなっていることも知っている。)
その昭和のTHEサラリーマンとも言うべき西村が、
自分の娘ほどの年齢の少女に、恋い焦がれ、
緩慢で怠惰な生活から飛び出そうとする、という
サラリーマン冒険記である。
ゲーテの『ファウスト』をなぞっていて、老いたファウスト博士ならぬ西村が、
マルガレーテである少女に胸を掻き毟るような思いをしているのだが、
結局のところ、それは老いへの平凡へのささやかな抵抗であって、
頑として存在する現実を乗り越えることは、難しい。
待っていたけれど、「時間よ、止まれ!」などという、場面は訪れるはずもなく、
年甲斐もなく、老年の男の瞳からは、ただ涙が流れるのだった。
サラリーマンが主人公だろうと、年のかけ離れたオジサンが主人公であろうと、
平凡な男の、哀しい負け戦は、ぼくにとっては、心に刺さるテーマである。
そしてまた現実に対する抵抗が、必死であればある程、切ない気持になってくる。
少なからずわからなくないから。
もっと観念的であったり、哲学的であるかな、と読んでいたけど、
ただ、男とは単純ないきものなのだなぁ、とありがちな感想を抱いたのでした。
