2008年02月01日

絲山秋子『袋小路の男』(講談社文庫)


袋小路の男
著者名:絲山秋子(著)
出版社:講談社
出版年:2007.11
ISBN :9784062758840


高校時代に出会った袋小路に住む男、小田切孝。
煮え切らない彼の態度にもめげないで、諦めずに片思いを続ける日向子。
そんな二人がセックスもキスも交わすことなく、続けていくつかず離れずの関係。
大学生になっても社会人になっても彼らの距離は縮まらないし、離れることもない。
嫉妬もするし、浮気もする。自由なようで自由でない。
あたかも袋小路に続く道のように、答えの、結果の見えない恋愛ってわけだ。

読み始めて、早くも小田切の描き方に少々やるせない感じがした。
こういうこと書かなくてもいいんだけど、
本当に遊んでいる人ならこんな風に書かないな、とか。
本当にこんな嫌な奴だったら、こんな関係しないよ、とか。

だから最初はちょっと引きめで読んでいたのだけど、
いつの間にやら自分の嫌いなところを
小田切に自分を重ねてしまってえらく感心していた。

あっ俺の方が嫌な奴かもなって。

そんなのはいいとして…

話を戻すと、
フツーの、平凡な男なら、手を出してポイっと捨て.てしまうだろう。
冒頭の方で、小田切が日向子に対して説教していた通り
「世の中っておまえが思っているよりもずっとイヤなものなんだよ(p.14)」
ってぼくが説教しそうになる。

日向子も冷静に考えれば、そんなに純粋一直線ってわけでもない。
気持ち悪い男に裸の写真を撮られるは、
新しい課長に妊娠させられるは、
結構へんてこりんな女でもある。

でも
そんなことがあっても、いや、そんな時ほど、小田切は優しい。
当たり前のように、横にいて、いつもと変わらぬ、
皮肉な口ぶりで、無駄口をたたきながら、話しかけてくれる。

とても自然なようで不自然な二人だ。

印象的なのは、典型的ダメ男の小田切は、
(おそらく「不覚にも」であろうが)
日向子の前で、涙する。
けれども彼女は彼を抱きしめることはできない。
当たり前のように、抱き寄せて温めてあげればいいのに、できやしない。
二人の関係はそうした「してあげる」行為はタブーなのを
痛いほど彼女は知っていたからだ。
ただ「エアコン」のように、間接的にその場所を温めてあげることくらいしかできないのだ。

読んでいて、こういうのもありなのかなぁ?と頭を傾げる。
でもやはりこうも切なく淡く現実はいかないものだ、と僕は思ったりもする。
現実はいつも切迫していて、グロテクスクであることが多い気がする。
(もちろん、異なった意味合いでの「切迫」やら
「グロテスク」やらも作品に見受けられるけど)
逆にいえば、だからこそ小説ってのが魅力的でもあるんでしょうが…
posted by より at 00:06| Comment(2) | TrackBack(1) | 絲山秋子