越後つついし親不知,はなれ瞽女おりん 著者名:水上勉(著)
出版社:新潮社
出版年:2002.08
ISBN :9784101141299
「越後つついし親不知」は、少々先が読めてしまったけれど、
水上さんらしい儚くも美しい市井の女性のお話。
古臭いと言ってしまえばそれまでだけど、
忍耐強く、献身的な女性が、悲劇的だと、胸がつまる。
男性も慎ましやかで、職人気質で、不器用だから、
なんでこんなに必死で生きている人たちが苦しまなくってはならないんだ、
と不条理なストーリーにホロリときてしまうのだろう。
前に取り上げた「越前竹人形」を短くしたような、薄めたような感覚
にとらわれてしまうのだが、水上らしい作品であることの裏返しでもあるのだろう。
「はなれ瞽女おりん」は、またよくって
彼の求める或いは描きたい男女の関係っていうのが、
また違う視点で描かれていて、しばし悩んでしまった。
おりんは、すぐに寂しくなって、見ず知らずの男と身体を重ねてしまう。
盲目という不自由な体のせいで、そうした外部からの圧迫を退けることが
できなくなるのであろうけど、あまりに純粋であるがゆえに、
道徳も理性もなく、ただただ人の温かみほしさに、体を許してしまうのだ。
けれども、偶然出会った岩淵は違った。どんなにおりんから近づいていっても、
抱こうとはしない。それどころか、少し距離を置くことで、
おりんへの愛を持続させ、強めている。
まるで兄と妹のように、仲睦まじく、
貧しいながらも必死で生活をやりくりしていくのだった。
盲目という設定、その女を献身的にささえる無骨な男。
わかりやすいんだけど、ほんとうにいやらしい感じでもあるんだけど、
だからこそともいうべきか、純粋な美しさ漂う仕上がりになっている。
ここら辺は、水上さんゆえの魅力なのだろう。
とか言ってもやっぱり理由は分からないのだけど、わかるなぁ、とか勝手に思う。
あんまり深く考えたくないが、岩淵とおりんの関係ってとても素敵だと思う。
また水上作品の定石である、強姦が起きてしまうことで、二人の関係は
壊れてしまうのだが、なんかとても悲しい気持ちになって、また作品に没していくのだ。
じめじめとしていて、風通しの悪い日本文学的性格を
強く持つ水上文学は、時に読むのが辛くなるのだけれど、
もう少し彼の描く関係性を知りたいなぁ、と思った次第です。
