明日のあなたへ 著者名:三浦綾子(著)
出版社:集英社
出版年:1996.10
ISBN :9784087485288
三浦綾子というと、『氷点』、『続氷点』を8年前に読んで以来、手にしていない。よく理由はわからないけど、あんまりにも真っ直ぐで、純粋な陽子(主人公)をみてしまったせいで、薄汚れ、疲弊した自分と比較したくなかったのかもしれない。
今もそうだけどね。
でも、この度、途方に暮れ気味の僕は、三浦先生のご説法に与らせていただこうと手にした次第でして、改めて彼女の優しく、それでいて強い気持ちの前に暖かくさせてもらいました。
T 自由に生きる幸せ
U 愛の重さ
V 愛は忍ぶ
W 罪に打ち勝つ道
X 淋しさに打ちひしがれたとき
と構成されていて(こりゃまいってる人が読む本ですね)、中心はやっぱり「愛」についてです。
それは単なる「恋愛」に限られたものはなく、クリスチャンである彼女であるから夫婦愛、家族愛、そして知らぬ人への愛、つまりアガペー的な愛についてのお話が繰り広げられています。
日常的な人間との付き合いの中で、具体的に体験を織り交ぜて語っているので、おのずから自分の生活に目をむけてしまいます。広い範囲で、深いとこまで、かなり考えさせられました。
人間は、他人がしたら許せないことも、自分ならば何食わぬ顔で、やり過ごしてしまう。
浮気とか、悪口とか、いろいろ。
三浦はいう
人間はどれほどの他者を許したかで、その人間の価値が分かるとも言われている。(p.17)
そうだよなぁ。
自分に厳しくあっても、他人には優しくすべきだ、と思う。
ぼくは実際そういう人間が好きだし。
これは「無償の愛」という話につながってくる。
三浦は、恋人への、友達への、家族への、献身的、自己犠牲的行動をあげて、「無償の愛に近い愛(p.63)」と言っている。それに対して「無償の愛」とは、相手が愛している人に限らず、全くの他人に対して向けられるものことをいうのだ。
三浦は、とある船で起きた実話をあげている。
船が事故で沈没しそうになった。しかし、救命具が限られていた。
ある神父は、そこで出会っただけの知らぬ人に対して、救命具を渡し、死んでいった、という話だ。もちろん神父にも妻子はあったし、事実残された妻はその後大変苦労したという。
これが「無償の愛」だそうだ。
やはり難しい、というか無理。
でも、心を打つ話であるのは間違いない。
神父がしたような「無償の愛」ができなくとも「無償の愛に近い愛」は実践したいものである。
それは恋人や友人に対するものであれば、まずなにより、そういった関係を築いていくためにも、人を赦していくこと、が必要になるのだろう。
まだまだあったのだけどもうやめよう。
ぼくはクリスチャンでもないのだけど、やっぱりキリスト教的なものが好きみたいだ。
「罪」という概念がとてもしっくりくるようなのである。
そして勝手なイメージでいえば、キリスト教の垂直的な志向というか、厳格で、またそれでも優しい世界観は、心地いい。
迷える子羊状態になりがちだったら、時にはこんな本を手にしてみるのもいいかもです。
