2007年12月10日

堀江敏幸『雪沼とその周辺』(新潮文庫)


雪沼とその周辺
著者名:堀江敏幸(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.07
ISBN :9784101294728


雄弁なので裏表紙から抜粋。
「山あいの寂びた町の日々の移ろいのなかに、それぞれの人生の甘苦を映しだす川端賞・谷崎賞受賞の傑作連作小説」

だそう。「雪沼」という架空の町の人々を、それぞれの人の視点から、穏やかに、ゆるやかに描いた短編集です。戦争が勃発するわけでもないし、大好きな人が死んでしまうわけでもなく、普通の人々のちょっと特別な日があるだけ。
「雪沼」という名前にふさわしく、目の前の寂れていく、失われていくものを、ゆっくり受け入れていく。雪国は忍耐強い人が多いというけど、しっかりと静かに受け止める姿は、じんわりと胸を打ちます。

こういうなんでもないようで、その人にとっては大切な事柄を丁寧に描くことは、いいものだと思う。しかも作家自身がフランス文学専門の実力ある大学の先生だから、読んでて文章に嫌な感じもない。

ただ『いつか王子駅で』を以前ささっと読んだことがあるが、耐えられなくて投げ出した記憶がある。なんでもない感じを面白くさせるのは大変難しいことなのだと思う。「雪沼」という舞台設定とその周辺を描くという世界が強く作用しているのでしょう。

現代の作品は、少々苦手であるし、好きな作家となることはないだろうけど、読んでよかったなぁ、と思える作品でした。
posted by より at 21:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 堀江敏幸