古道具中野商店 著者名:川上弘美(著)
出版社:新潮社
出版年:2008.02
ISBN :9784101292373
文庫読みなので、ようやく読みました。
川上弘美も久しぶりな感じ。
ぼくは、川上弘美といえば、短編の方が好きなので、
一気呵成、というわけではなかったけれど、
物語の調子、とともにゆっくり読み進めました。
骨董品と聞けば、高価で物々しくて、あまり触れることができない。
長い歴史がモノの存在感を強めているから、流れる大河へ思いをはせたなら、
ロマンを感じることもできるかもしれない。
一方で古道具。ありきたりの生活の中、存在を主張することなく、
そこに在る。文鎮とかミシンとか灰皿とか。
手に取って見れば、人の温もりがあって、
感じるものは、誰かの小さな記憶とか印象。
この物語も、じわじわ胸に染みいる日々の断片たちのつながり。
川上ワールドだから、ふわふわさらさらの感触だけど、
手に残る感触は確かなはずだ。
古道具屋さんを営む、中野さん。
そこでバイトするヒトミ(「弘美」を連想してしまうぼくはバカかな)。
同じくバイトのタケオ。
中野さんの姉、マサヨ。
古道具そのもののような四人がいて、
いくつかのエピソードがあって、
その間に、それぞれのぐずぐずの恋の事情があって、
最後にお店がなくなって、たくさんのことが終りに近づいて、
そして、しんみりと懐かしくなってくる。
川上文学は、全体的なものを感じる。雰囲気、空気のような。
心地が良くって、現実から切り離されて、時間が止まったような世界観。
人を駆り立てるような東京のせわしなさはなくって、
地方の寂しい閑散とした感じでもなくって、
あるようでないような、遠い場所。
だから核心というか芯を抜き出そうとしても、意味なくって
ただただ浸る、これがぼくのイメージ。
ただし、やっぱり話の中心というか、
気になってしまうのは、ヒトミとタケオの関係。
川上弘美ってほんとうにダメな男が好きなんだなぁ、とか思った。
世のダメ男を救うような作家さんだが、
作中のダメ男たちは、確かに不思議な吸引力を持っているからすごいな。
ああいうぐずぐずとしてあいまいな恋愛のはなしは、
面白いもんです。もちろん当事者でなく、傍観者としては。
