2007年09月24日

福永武彦『忘却の河』(新潮文庫)


忘却の河 改版
著者名:福永武彦(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.08
ISBN :9784101115023



福永武彦は一般的に知られた作家なのだろうか?

少なくとも僕はよく知らなくて(門外漢なんです)去年『愛の試み』を読んだのが、出会いでした。

哲学思想に造詣が深く、挿話を含めたエッセイとも哲学書とも言えるようなその本を読んで、感銘を受けました。
またその深く沈んでゆくような落ち着いた書きぶりが気に入ってしまいました。

そして、最近改版として新潮社から出版されたのが、この『忘却の河』です。
一つの家族をめぐる連作小説とも言えるような長編で、家族のそれぞれの視点から物語は語られます。

それぞれの人間が、己の罪深さを見つめ、そのような中でも人と繋がろうとして、けれども孤独であり続ける。
特に、女を裏切り、罪と恥を抱えなら歳を重ねた、物語の中心である父親の話は、よく理由は分からないが、共感してしまうものだった。
内面的な語りが多く、少々感傷的というかネチネチしてしまうところもあるけれど、そんなところも含めて、僕にぴったりな小説のような気がして、読みました。

しかしながら、なにより驚いたのが、池澤夏樹についてである。
今回の文庫には新しく池澤のエッセイというか解説が、載せられた。
始めは、池澤が福永氏のような作家が好きなのかぁ、と驚いたのだが、
解説を読み進めると

  最後に申し添えれば、福永武彦はぼくの父である。(p353)

…え?「父」だったの?

何と福永氏池澤氏血縁関係があったようだ。
正直有名な話なのかもしれないけれど、なんというか変なところが点と点でつながってしまう感じに衝撃でした。

そんなゴシップはさておき池澤氏の小説も面白いですが、福永氏の小説は深みがあって透明感があって、なにより真摯で、とても素敵です。
今度図書館に行って全集でも借りてこようかな、なんて思ってます。
posted by より at 21:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 福永武彦