2008年05月11日

吉田修一『7月24日通り』(新潮文庫)


7月24日通り
著者名:吉田修一(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.05
ISBN :9784101287539


季節的な仕事の忙しさやら、プライベートの混雑もあいまって、
かなりブログの更新が滞っていたので、とりあえず更新するために、
ふんわり軽い小説をがつがつ早食いしてきました。
実際はちょこちょこ読んでいたのだけど、ぐったりしてたもので。

吉田修一は、『パークライフ』で芥川賞を受賞していて、
作品発表時に友人と一緒に読んだことがある。
全く話の筋を思い出せないのだが、日比谷公園を人の体になぞらえていて、
面白い視点だなぁ、と感じた記憶がある。

本書は、よりエンターテイメント色が強くなっている恋愛小説であるが、
主人公の小百合が自分の住む街を、ポルトガルのリスボンになぞらえて生活している、
という設定は面白かった。
実生活でそんなことしているんだったら、さぞ辛い人生なのだな、と想像しがちだけど、
そんなことはなくって、映画「アメリ」の主人公が、数多くの小さな妄想に浸っていたように、
生活を少しだけどハッピーにしてくれる妄想。

彼にとって物語が進行する場所がどのように機能しているのかは、よくわからないけど、
自分のいる場所を俯瞰して、自分のものしてしまうことは、
新たな世界の認識であるのだと思う。
どこにでもある地方の街並みを、リスボンという果てしなく遠い場所
(作中でも主人公は実際にリスボンに行こうとはしていない)、
つまり文字通りのユートピアなんだろうけど、それに置き換えることで、
自分という存在も含めて、街が大きな物語というか美しさに包まれるというような。
なにがいいたいのか、よくわからなくなってきたけど、こういうのは個人的に好きってこと。

平凡なOLを主人公にしているってのもみそなのかな、と思う。
そしてその冴えない女性の少し踏み切った恋愛小説だし、
重たい小説とか、読まない人でも気軽に共感できるんだろうな。
すなわちぼくは共感できない、ということを意味しているんだけれども。

でも、恋愛、という主題は、すごくってどんな人にでも無理やり自分に取り込めるような
いいテーマだから、主人公のモテない思春期の話やら、初体験やら、憧れの先輩やら
ありきたりというか普遍的なエピソードがちりばめられていて、退屈はしない。
しかしぼくには全く当てはまらなかったんだけれども。

唯一、重苦しい断片である、安藤と亜希子という夫婦が離婚に至る話なんかが、
もう少し掘り下げてもらいたかったように感じたが、そんなことしたら、
話の筋がおかしくなってしまわなくもない。

あと、地方出身のぼくとしては、東京に出た憧れの先輩の話とか、地方に居座った主人公の
感覚が興味深かった。今考えてみると、昔の自分を乗り越えようとしているとか、
昔話ばかりしてしまうとか…。
故郷というのは、どうしてもその人間を形作るうえでのバックボーンというか原風景になりますからね。
まぁでも、ぼくの故郷の偉人の言葉を借りるなら、ふるさとは語ることなし、です。
ちなみに坂口安吾ですが…。

総じて物語自体は、そんなに「胸キュン」するような話でもないし、
深い教訓が秘められているわけでもないけど、スラスラ読めてしまいます。
だろうから、今読んだんだけどさ。
実際、二時間くらい?の感覚ですぐさま読めてしまったし。
というかこれは映画化されたらしいけど、
映画にした方いいとはおもう。そんな軽い感じの読み物です。

また無駄な辛めの感想になってしまいましたが、
吉田修一は、この不作な現代の文学界で頑張っている人なのでしょうから
もう少し読んでみるかな。
posted by より at 01:47| Comment(2) | TrackBack(0) | 吉田修一
この記事へのコメント
これ、映画になったやつよね?映画名は『7月24日通りのクリスマス』だったかしら。
映画は、かなりほのぼのしていて楽しかったわ。ベタすぎて恥ずかしい感じもしたけれど。

あなたも日々忙しそうね。
またおいしいもの食べに行ける日、心待ちにしてますよ。
Posted by あくび at 2008年05月11日 10:19
そうだね、小説からもベタな感じは、
想像できる。もう少し恋愛面を強調してそうだね。

でも外国の地名はどうしてこうも素敵なんだろうね。
明治通りや環七では、太刀打ちできないものね。

少し忙しかった。
でも、どうしても本は読みたくなるものですね。
どんなものでも。もう少し頑張りたいなぁ。
Posted by スマイル at 2008年05月18日 01:05
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