日の砦 著者名:黒井千次(著)
出版社:講談社
出版年:2008.03
ISBN :9784062759984
日常に潜む不安、この一言に尽きるんだろうけど、
じゃぁ、こうしたテーマがすごいのか、あるいはおもしろいのか、
といえば、個人的には、よくわからない。
しかも問題が複雑なのは、本作の解説を書いているのが、小池昌代なのだが、
以前取り上げた『感光生活』はよくって、こっちはダメかってっていうと、
そうではなくって、さすが昔から活躍している作家だ、と感じさせる筆力は、
あるから、どうして、いまいちというか、すごい、と感じることができなかったのか
考えるとわからなくなってくる。
退職したばかりの男、とその妻と娘、結婚した息子、というよくある平凡な家族が
主題で、その平凡な一家の日常を言い知れぬ不安感とともに描ききった連作短編集である。
偶然乗ったタクシーの運転手との些細な会話。
腰を痛めて、妻の勧めでいったマッサージ師との会話。
どれも特別でもない、よくある風景なのだが、
ともすれば、なにか不吉が起きそうな奇妙な現実。
ただ、連作短編という性格もあってか、物語性があまりないものだから、
物足りなく感じてしまったのかもしれない。
エッセーならそれでもいいのだろう。
しかし、短編であろうが、やはり物語性を求めてしまうのであろうか。
実は、例の如く、黒井さんの本は初めてなので、
もっと他の作品を当たってみなくてはならないのであろうな。
