2008年03月17日

石川達三『四十八歳の抵抗 改版』(新潮文庫)


四十八歳の抵抗 改版
著者名:石川達三(著)
出版社:新潮社
出版年:2008.02
ISBN :9784101015149


また新潮社の復刊ものの一つ。
昭和31年という想像もできないほど遠い昔の物語。

バブルさえ実感できなかったぼくのような人間でも、
共感できるような読みやすさがあって、
現代でも60歳くらいの人が読んだら、
引き込まれてしまうのではないかと思う。

題名からも、その作品の渋さがひしひしと伝わるのであるが、
その通りで、平凡な保険会社のサラリーマンの西村が主人公。
「平凡」であるどころか、平板すぎて、会社の外での行動は、
不器用だったり、幼稚だったりで、
よくいる何もできないサラリーマン、といった感じ。
(もちろんそう言うぼく自身がそうなっていることも知っている。)

その昭和のTHEサラリーマンとも言うべき西村が、
自分の娘ほどの年齢の少女に、恋い焦がれ、
緩慢で怠惰な生活から飛び出そうとする、という
サラリーマン冒険記である。

ゲーテの『ファウスト』をなぞっていて、老いたファウスト博士ならぬ西村が、
マルガレーテである少女に胸を掻き毟るような思いをしているのだが、
結局のところ、それは老いへの平凡へのささやかな抵抗であって、
頑として存在する現実を乗り越えることは、難しい。

待っていたけれど、「時間よ、止まれ!」などという、場面は訪れるはずもなく、
年甲斐もなく、老年の男の瞳からは、ただ涙が流れるのだった。

サラリーマンが主人公だろうと、年のかけ離れたオジサンが主人公であろうと、
平凡な男の、哀しい負け戦は、ぼくにとっては、心に刺さるテーマである。
そしてまた現実に対する抵抗が、必死であればある程、切ない気持になってくる。
少なからずわからなくないから。

もっと観念的であったり、哲学的であるかな、と読んでいたけど、
ただ、男とは単純ないきものなのだなぁ、とありがちな感想を抱いたのでした。
posted by より at 21:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 石川達三
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